祖父と祖母の結婚式の思い出

実家に帰ることが少なくなった今、最近思い出すことがあります。
それは、結婚前夜でのこと。
珍しく父母、祖父祖母が一緒に食事をしていた時のことです。
明日は結婚ということで、これが最後の家族での食事と思いながら食べました。


既に、高齢で物忘れが激しくなっていた祖父。
受け答えもあまりできなくなっていた祖父でしたが、その日はとても機嫌がよく楽しそうでした。
そして、どこからか祖父と祖母の結婚式の日の話しが出てきました。

祖母が馬車に乗ってこの家にやってきたこと。
玄関のところで待っていた祖父が、立派に見えて本当に素敵で嬉しかったこと。
たくさんの人が花嫁行列を見ようと道路に出ていたことなど、出るわ出るは祖母の思い出話が中心になりました。

まるで少女のようなお婆ちゃんです。
それを聞いて、祖父が嬉しそうに笑っていたのです。
今思うと、たぶんあの時だけは祖父の頭はしっかりしていたのでしょう。
だからあんなに、優しく嬉しそうな顔を見せたのだと思います。

良かったなと、今凄く思うのです。
昭和後半の時代に生まれた私には、きっと計り知れない色々な物を抱えながら、生きてきたであろう祖父と祖母。
いえ、きっとこのくらいの年齢の方々は、多かれ少なかれ同じような過酷な日々を送ってきたのだと思います。

祖父の人生の終盤に、思いがけず自分が一番輝いていた時のことがこんな風に話題に上がったこと。
特別な日に話題にできたことを今とても良かったなと思うのです。
また生まれ変っても、祖父と祖母はきっと結婚するだろうと父が言っていました。
私もそんな気がします。

そんな祖父祖母のところに生まれた私です。

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